信剣士の細やかな時間のホット一息

チャレンジャーとしての世界で生きたいと思います。会社にエネルギーを注いで来ましたが自分の存在が如何に薄いのか思い知らされ、これからは自分の希望のためにエネルギーを使って見ます。私は何処まで歩いて行けるのか知りたいです。ぶらっと、いろんなテーマに触れて行こう。

《ブログ小説》ブラックで踊る今日とfive star story 21(水菜と公園と一つの影)

5人は、会社に戻って来た。

当然だが、もう一台の車も5人からは見えない位置に潜んでいる。5人は一旦皆んなが車から降りて来て駐車場で軽くお開きの挨拶をしている様だ。そして一番最初に劉基が自分の車に乗り込み駐車場を出て行った、それに続くように拓也もまた駐車場を後にした。

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悠史は控えめな声のトーンで水菜に向かって話しかけた。

「佐々木は自分の車に乗ってロックを掛けて俺が合図する迄、少しだけ待っていろ」

水菜は悠史の顔を見て軽く頷いた。そして車に乗り込む。悠史と美咲が2人で車に乗り込み駐車場を出て行く。ハンドルを握る美咲に悠史が話し出す。

「予定通りに、向かって第2駐車場の方に車を回して欲しい。」

少し緊張を見せる美咲が声に出す。

「なんかドキドキするね。ミズ大丈夫かな」

悠史がスマホを取り出して水菜にコールする。

「・・もしもし」

「いいぞ、向かってくれ」

スマホを切って懐にしまい込む。悠史と美咲は無言のまま目的地まで車を向かわせた。

 

 

水菜は悠史の指示通り車を走らせた。喉が乾く暫く孤独と不安の戦いだ。怖くないと言ったら嘘になる。

 

 

高仲は1人で残された水菜に気持ちが騒いでいた。次々と去って行くメンバーを陰から見つめながらチャンスの気配を感じていた。そして今、水菜の1人で乗る車が動き出した。すかさず高仲は車のエンジンをかけて後を追う。

(水菜・・帰るのか?)

高仲は水菜の自宅が分かりそうな状況に期待する胸を抑えて、前方を走る車を見失わない様に注意を払う。高まる心臓の鼓動がうるさい。

 

 

 

目的地に一足先に着いた悠史と美咲、例の第2駐車場の隅へ静かに止めて、ヘッドライトを消す。美咲は大きく深呼吸して悠史を見た。

「時期に劉基が来る、それまで俺が出て行った後はドアロックして、あいつを待て」

美咲は無言で頷く。

悠史は車を降りて公園の中に入っていった。

悠史の向かうべき場所は第1駐車場である。

そこへは水菜が来る予定となっている。第1駐車場の近くには公衆トイレの建物が有りとりあえず、その辺に忍び込んだ。

暫くすると一台の車が第1駐車場へと入って来た。その車は公園に入る一番近くの駐車スペースに止まって、ヘッドライトが消えた。

悠史の予想通りもう一台の車が居たのだが、その第1駐車場へは入らずに不自然な場所へ車を止めてヘッドライトも消えた。

その車は悠史の場所からは確認が取れるのだが、水菜の止めた場所からは確認しずらい場所に見える。早速悠史は懐のスマホを取り出して水菜に2度目のコールをした。

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高仲は止めた車の中で水菜の様子を伺っていた。チャンスを感じていた自分の直感に少し戸惑っている。ここは比較的広めの公園ではあるが街頭が少な目で今みたいな夜では女性の1人歩きは不自然な位である。

(水菜・・どうした?)

(こんな人気の少ない場所で・・)

(運命は俺にチャンスをくれたのか?)

(それとも夕方の俺との出来事に俺を受け入れたいと・・俺の存在をようやく気づき出したのか。)

 

 

水菜が悠史からのコールに反応した。

「もしもし。」

やはり不安に満ちている様だ、悠史が声を掛ける。

「佐々木、今はお前の見える場所にいる。」

「そこから公衆トイレが見えるか?」

水菜は辺りを見回して、悠史の言う公衆トイレを探す意外と直ぐに見つける事が出来た。

「うん、見えるよ」

「その建物の陰にいる。安心しろ!」

ようやく水菜は悠史が自分の近くに居てくれてると感じ少しだけ不安を解消出来た。

「そこで、もう少し待ってくれ。劉基の準備が出来たらまた連絡する。」