《ブログ小説》ブラックで踊る今日とfive star story 22(水菜の孤独を囲む仲間と近づく不安)
(窪さん、上手くやれるよ・・ね・、ミズ頑張って大丈夫だから・・)
美咲の心境に落ち着きが無くなりはじめた頃、
一台の車が美咲の車の横隣に止まった。その車の助手席の窓が開き始めた、ほぼ同時に美咲も窓を開けた。拓也である。
「よっ、」
軽く手を上げて挨拶して来た、少し表情が明るい少し驚いた美咲ではあるが運転席側には、劉基がこちらを見ていた。そして劉基が、
「行きますか。」
「付いて来て!」
頷いて2人をみてると彼らの車の窓がしまった。劉基が誰かとスマホで連絡を取ってる様だった。右手のスマホは耳元に当てられたまま劉基達の車が下がり始めた。向きを変え始めた車に続いて美咲もまた、車を動かした。
「・・・・・」
(ミズ・・ )
劉基の話相手は悠史だった。
「美咲を、拾ったっすよ。今からそっちに向かいます。」
「了解、そっちは順調か?」
「予定通りっすね!上手くいくといいっすね。」
「動いてみんことには、まだわからないな。」
「まっ、どちらにせよ水菜に泳がせてみる。」
早速、悠史はスマホを切って水菜にコールする。水菜はさすがに緊張もピークに達している、心臓が暴れてる。悠史のコール音に一瞬ビクッとなったが深呼吸してスマホを取った。
「はい。」
「佐々木か!窪塚だ準備は整った。車から出られるか?」
水菜はこの場で引き返せ無いと思っている。悠史を信用するしかない。どちらにせよ今の段階では危険を回避した事にはならない。水菜は頑張るしか無いのだと自分に言い聞かせた。
「うん、頑張る」
「・・すまないなもう少し頑張ってくれ俺はお前の側に居るから・・安心しろ!」
「うん」
「いいか、この通話を切ったらラインを開いて俺のチャットモードを出しとけ、そしてスマホを胸元付近で確認できる様にしてくれ、連絡を入れていく、外に出たらそれを連絡手段にする。まずは車を降りたら俺のいる公衆トイレの脇の道を奥に進んでくれ、・・佐々木もう少しの辛抱だ頑張ってくれ、頼むぞ!」
「うん」
水菜はスマホを切って悠史の言った指示通り設定して、再び深呼吸した。
そして、勇気を出して車から降りた。
恐ろしい程に心臓が叫んでる。
(・・・・・・)
ゆっくり歩き出して胸元のスマホをにらめっこする。手元がとても明るく照らされている。
高仲は水菜が動き出した事に気持ちが動転している。
(何が起こる?)
(・・・?)
高仲はとりあえず、静かに車を降りた。
足音で悟られ無い様に少し小走りながらもそーっと歩き始めるのだが、物陰に隠れる様に水菜との距離を保つ。それらも悠史にはバッチリと確認出来ている。そして悠史は水菜の位置を確認しながらチャットを始めた。
(順調、そのままのペースで進め)
水菜も返信を返す
(大丈夫?)
(心配無い)
(俺も、お前に付いて動く)
水菜は確認しながら少しまた少しと歩いて行く。
(なんか気配するよ)
さすがに夜の静まり返った公園だ、いくら忍び足とは言え敏感になっている水菜には気配を感じてしまうのは仕方がない。
(大丈夫だ、俺だ!)
水菜は不安と安心の両側に行ったり来たりしている。悠史は高仲の存在も確認しつつ水菜との距離を意識しながら奥へと進む。
街灯と街灯の間の距離が若干開いているのか、所々に明かりの届きにくい場所が存在している。悠史はそれが丁度良いと思った。
高仲もまた少し興奮気味になっている、夜の暗がりと水菜の存在。彼は今、2人きりだと勘違いしている。心臓が高鳴っている。
(もしかして・・オレ達はクライマックスを迎えるのか?)
(水菜は俺に何を期待している?)
高仲は夕方の水菜よりも、もっと大胆に水菜を噛み締めることが出来そうだと感じていた。
そして、どんどんと水菜との距離が詰まる。
その頃、劉基達が第1駐車場に到着していた。
美咲の車と劉基の車もまた、広い駐車場の隅に二台とも止めた。美咲は劉基と拓也の車に視線を向けると、ちょっとした衝撃を受けた。
「?」
「・・・・・」
その車から降りて来たのは2人だけでは無かったのだ。劉基、拓也そして女の子2人も降りて来た。女の子達は若干派手な身なりをしている。そして美咲と水菜も魅力ある2人だが、その2人も負けじと劣らない魅力を放っている。
美咲が、呆気に取られている間に拓也が美咲の車の助手席側の窓をコンコンと叩いてきた、慌ててドアロックを解除した。すると拓也が助手席のドアを開けた。
「乗っていいか?」
美咲はどうなってるのか、まだ良く分かっていない様だが、とりあえず頷いた。
「お邪魔するよ。」
「・・どうなってるの?」
拓也は公園の奥に視線を向けながら説明し始めた。
「とりあえず、俺は美咲の護衛だって。」
「はっ?」
「あ、ありがとう。」
「それで?」
「劉基達は最後のシメ役だって!」
そうこう説明し始めている内に劉基達3人は、公園の奥の方に向かっていた。