ブラックで踊る今日とfive star story 16(水菜と仲間達)
たった数分の出来事だった。
水菜は疲れていた、何気ない所から始まった仲間たちとの会話。
そして彼、高仲の件
まさか、そんなタイミングで彼が登場して来るなんて奇遇すぎる。
必要以上に気を張ってしまったのか、意外にも疲労感が漂っている。
あの時、彼が速やかに引き上げてくれた事に安堵していた。考えてみると彼は用事があったのではと思い返していた。
水菜は事務所の扉を開けて中に入った。
「戻りました〜」
軽く水菜が静かに声に出した。
近くにいた拓也が水菜の変化に反応した。
「?、どした?」
「なんか、テンション低くね!?」
拓也は水菜が席に戻っていく姿を、視線で追いかけていた。
水菜は、席に着いてペットボトルのお茶を開封しながら、拓也の方に視線を向けて質問に答えた。
「実はね、今戻って来た時に高仲さんに会っちゃったんだ。」
「それで、私が出掛ける前に話していた内容と絡まって・・えっと・・」
水菜は、そこで言葉を止めた。
「あ〜さっき、窪さんと美咲で何やら話してたやつね!」
拓也は、悠史と美咲に視線を送った。2人の意見や反応が気になったのだ。
2人は、拓也と水菜の話をすでに聞いていた様だ。まずは美咲が口を開いた。
「それで、どうしたの?彼は?」
水菜のシュンとしている雰囲気に、そっと質問してみた。彼女もまた、あんな話をした直後に水菜と彼が遭遇したことについて驚いている様だった。
そして、彼と遭遇していたとして張本人のあいては、一体どうしてるんだろう。
「帰ったよ。」
「ここの駐車場で会ったんだけど・・」
「私が、帰って来た時に高仲さんも丁度うちの駐車場に入ってきてたの。」
悠史、美咲、拓也、そして劉基も注目して水菜の話を聞いていた。
(まじか!やっぱりちょっと今回の件は注意しないとマズイな。)
悠史しは、彼の影も見ていて美咲の言葉とその直後に水菜と遭遇。
(一連の流れが、とてもスムーズに繋がって行くじゃないか!)
しかも彼女、水菜はしょげてしまっている心境。
(想いは流れる角度が悪いと、望ましくない方に進んでしまうからな)
黙って、悠史も水菜の言葉を待つ。
「それでね、私の出掛ける前に丁度、高仲さんの話題になってたから」
「その時も、どうしようって思いながら頑張って自然に振舞おうって思ってたの」
「なんかね、仕事で段取りしたい様だったから一緒に事務所に向かい始めてたの、そして建物に入りかけた時、いきなり腕を掴まれたんだけど物凄く力が強くて・・なんか凄く怖くなっちゃって、思いっきり振り払っちゃった・・」
「そしたら高仲さん、ゴメンって言って帰って行った。」
やはり水菜は、高仲の突然の行動に戸惑っている様子である。
「高仲さんもエネルギッシュだな」
「佐々木」
「ある意味、告白みたいなもんなんじゃね!」
劉基からは、ちょっと不器用な男性ぐらいにしか見えないんだろう。
「まぁな、佐々木が興味ないなら複雑なのかもな!」
水菜は、彼に対してそんな風に意識してたこともなく複雑な心境はクリアされない。
「うん、ちょっと困っちゃうかな」
美咲がそんな状況だった事を確認して
(やっぱり、高仲さんそうだったんだ。)
彼の行動と、水菜の今のテンションで何となく
関係性が上手くないのは理解出来た。
「ミズ・・、大丈夫だった?」
「私、いつでも相談に乗るからね。」
美咲は水菜にとって、姉貴みたいな存在である。とても心強い味方である。
「うん、ありがとう」
「後で、聞いてくれる?」
水菜は応えた。
美咲は水菜に向かって、無言で優しい笑顔を見せた。