信剣士の細やかな時間のホット一息

チャレンジャーとしての世界で生きたいと思います。会社にエネルギーを注いで来ましたが自分の存在が如何に薄いのか思い知らされ、これからは自分の希望のためにエネルギーを使って見ます。私は何処まで歩いて行けるのか知りたいです。ぶらっと、いろんなテーマに触れて行こう。

《ブログ小説》ブラックで踊る今日とfive star story 23(暴走しかけた恋の行方と恐怖の水菜)

悠史のラインに劉基からのコメントが入って来た。

(公園、入り口、奥進む)

悠史はそれを確認する。

(了解、そっちは頼む)

そろそろか・・、と悠史は動き出した。水菜のスマホにメッセージを入れた。

 

 

 

水菜は、自分の近辺で騒つく気配に血の気も引いていた。自分の背中辺りに敏敏に伝わる高仲の恐怖に感じる恋心、鳥肌が立ち始めている。

(やっぱり、なんか近づいてる・・)

背後から段階と近づいて来る気配、水菜はただ真っ直ぐ前を向いて歩く。振り返る勇気も沸かない、視線は前方とスマホにしか動かせない。

(どうしよう・・)

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水菜のスマホに悠史からの連絡が入る。

(・・・・・・・・)

水菜の頭の中は真っ白になって行く、ただ視線だけは正面を向き、前方のなるべく奥へと凝視する。段々と霧の様な深い闇の中へ歩いて行く。

 

 

 

高仲は前方を歩く水菜を見つめながら追いかけて来た。かなりの至近距離まで詰め寄る事も出来ている。最初は自分の身を隠す様に忍び寄っていたが、今では水菜の歩く歩道の脇を歩いている状態だ。

(水菜・・お前が見えてる・・)

胸が騒ぎ立てている。

 

ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・・・

 

(水菜よ、俺に気づけ!受け止めろ!)

(こんなに2人の距離が近くに感じたのは始めてかも知らない・・)

 

(いいんだね!・・行くよ。)

高仲の足取りが更に早くなる。

 

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水菜は、背後から来る気配を感じていた。

 

(・・段々・・近づいてる・・)

 

(・・早くしないと・・もう・・)

 

(・・歩けなくなっちゃう・・・。)

 

どんどんと近づく気配。自分の後ろのどの辺に居るのかまで感じ取れる。

背後に近づく恐怖の気配、本当に近い

 

(・・もぅ、・・ダメかも・・・・・?)

 

(・・!?)

 

 

 

高仲が、踏み込もうとした瞬間!

(・・?)

水菜が駆け出した、ほんの一瞬の差だった!!

 

水菜の意識は背後に集中していたのだが、視線は前方から逸らすことは無かった。

 

水菜の駆け出した先には薄っすらと、もう1人の影が有ったのだ!水菜はただひたすらに、前方に存在する彼の影を探してたのだ。

 

 

(風が、一瞬だけ揺れた。)

 

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思わず水菜は悠史の胸へ飛び込んでいた。

悠史は、水菜にだけ聞こえる様に囁いた。

「良く頑張った。もう大丈夫だ。」

水菜は安堵感から目元が潤んできた。

「凄く怖かったんだから・・」

「バカ、なんでこんな事させるの・・。」

 

 

「もう少し、じっとしてろ!」

悠史の視線は、水菜の走って来た先の高仲の人影を捉えていた。気配から、こちらを向いたまま立ち竦んでいる様だ。

 

 

 

高仲は愕然とした。

(・・・)

(・・・・・・誰だ。)

 

(・・恋人)

 

 

(ここで、会う約束?)

 

 

(・・俺は・・何をしてたんだ。)

 

 

(・・俺は・・何を見てたんだ。)

 

高仲は肩を落として振り返る。

来た道を静かに歩き出した。

(・・・・・)

彼の頭は、未だ整理が出来ないでいた。

 

 

 

悠史しが、ボソっと声を掛けた。

「2つのお山さん、ご馳走さん。」

 

(・・・?)

 

水菜はあまりの恐怖に、結構本気でしがみ付いていたのだ。安堵感のためか急に我に返り自分の行動に恥ずかしさが込み上げて来た。

 

はっとした水菜が悠史から距離を取った。

 

「エロジィー・・・ありがと。」

 

ようやく振り返る事が出来る様になった水菜が来た道を見つめて話しかけた。

「もう、大丈夫なの?」

「引き返したみたいだな。」

「どうするの?」

「仕上げは劉基に任せてある。」

「!?、劉君も居るの?」

悠史は笑顔である。少し誇らしげでもある。

 

「佐々木!お前の仲間は何人いる!?」

 

「・・・!?」

「えっ!皆んな居るの!?」

 

悠史は反応せずに喋り始めた。

「北川に連絡入れてやれ!」

「少し戻ると自動販売機あったよな、コーヒーでも飲むか。」

 

「うん!!喉カラカラだよ!」

「誰かさんのせいでね!」

 

 

 

 

ふと、悠史が思い出した様に口を開いた。

「そういえば、待ってたのにな・・」

「・・?」

 

悠史は少し夜空を見上げて歩いてる。

水菜は、はっとした。

 

「バカ!!エロジィー!!」

 

これが悠史が水菜へ最後に送った最後のメッセージである。

俺はお前の歩く前方で待機してる。

とりあえず、そのまま進め!

 

俺の影が見えたら来い。

 

 

 

追伸

別に俺の唇奪っても構わん!!

好きにしろ!!