刹那に抱かれて
「もう、終わりにしよう。」
って、言い残して私のアパートから、出て行った。
彼女との別れの瞬間である。
私からは、泣いて出て行った様に思えた。
追いかける事が出来なかった、私の弱さや力不足が、撒いた結果である。
本気で、愛してたのは、確かなのに。
あの時の私は、自信と勇気が全然足りてなかったからだ。
暫くは動けなく、俯いていたのは古い記憶の中でもまだ、覚えている。
私がまだ、若かった日の出来事である。
今思えば、とても懐かしい思い出です。
突然に、あの頃の恋事情が蘇ってしまった。
比較的思い出し易いと言うか、私にとって凄く強い痛みを覚えた出来事だったんだろう。
思い出に戻ります。
私は彼女と、半同棲生活な日々を送ってきた。
とても幸せな日々、30分前までは、ずーっと続くと信じてた。
でも確実に彼女は私に愛想尽かして、出て行った。
追いかけて、呼び戻せるほど、自分に自信が持てなかったのです。
喉が渇き、冷蔵庫を開けると、昨日まで無かったはずの、2人分の食材がある。
胸が苦しくなる。
彼女も又、昨日と変わらぬ今日でいるつもりだったらしい。
私は、自分の無力さか逃げる様に、ベッドの中に潜り込んだ。脳と心を現実から解放したかったのかもしれない。
町の小さな運送会社で、私の中途入社で彼女が先輩にあたる関係にあり、そこから親睦が生まれたことが、お付き合いの始まりです。
彼女が部屋から出て行ってからは、仕事にも来なくなった。
複雑な心境が、心を締め付ける。
私たちの関係を知る同僚は、遠慮がちに質問してくる。
「どうした?」
当然ですが、その質問も痛いし、苦しいものだった。
「うん・・、別れた・・」
全ての動きの根元は、私の無力さである。
そして、彼女が行なっていた仕事を、私が行なう事になり、トラックまでも彼女が使用してたものが預けられた。
トラックのドアを開けると車内は女性が運転してたんだろうなと思えるくらいに、飾り上げられ、また、見慣れた彼女の私物も置き去りにされたままの状態でした。
乗り込んで見ると、激しく感情が揺さぶられる。少し前までは、何の躊躇なく手にとってみる事が出来たのに、気軽さが抜けた現実に、また感情が縛られる。
車内は、彼女の好みに飾られ、ここに残された余韻が運転中の私の目から涙が流れる。
それを、隠すようにグラサンに手を伸ばす。
彼女を、傷つけて、失望させ、私が与えてしまった痛みを・・
報いだと、刹那と苦しみ、痛み、今度は私の番だと・・
現在は、思い出の中にしまって有り。
おかげさまで、そこそこ充実した毎日を過ごしてます。
私が、この過去を振り返って見ると、現在でも胸が苦しくなります、そして確かに彼女の事を愛してました。
今は、彼女に感謝してます。
過去には、戻れませんが戻りたい希望も抱いてません。
仮に、現在出会ったとして、あの時の感情が湧いて来ないだろうと思ってます。
その時の物語は、失恋としてエンディングを迎えたのだから。
では、また。