ブラックで踊る今日とfive star story 11 (忍び寄る見えない恋心3)
悠史にとって美咲の言葉は興味深い一言だった、きっと水菜の反応から推測しても、水菜本人も聞きたい内容だと思う。
美咲は、自分の感じてる心境を話し始めた。
「ミズ、貴女の事を気に掛けてる人が居るんだよ。多分だけどね!」
やんわりと伝えている。
水菜は複雑な感覚の表情だ、きっと美咲の発言に疑問を持ってもいるようでもある。
「誰?全然分かんないんですけど・・、からかわないで欲しいんですけど。」
「これといって誰も私に、リアクションすらしてくれてませんが」
水菜の言葉通り本人は、全く気付いてる気配が無い。
彼女は、いつもこんな調子である。もしかしたら、こんなタイプの女性が魔性の女として育って行くのかもしれないと、悠史は思った。
「N社の高仲さんだよ」
悠史は、はっとしてしまった。
そうなのだ、事務所に戻って来る時にチラッと見覚えのある人影。
まさしく、その彼だったのだ。
そして、タバコの銘柄も彼が吸っている物でもあるのだ!
あまりにも、情報同士が繋がって行く事に悠史も戸惑ってしまうほどである。
「えっ?まさかでしょ。」
「私から見たら、そんな感じ全然しないよ!」
水菜は、目を丸くして驚いてる。
彼女は男性心理を中々理解出来ないのだ、恐ろしい程の鈍感女子である。
美咲は、丁寧に説明する
「こう言うのはね、外から観察してた方が案外見えて来るものなの。」
「例えばね、彼が来客として、うちに来た時でも、ミズに何か依頼した時に貴女は、その依頼をこなそうとして、仕事の処理をし始めたとしても彼は貴女に熱い視線を送ってるんだから。」
何故か嬉しそうに、美咲は微笑んでいる。
「ず〜っと」
「そんな私の視線感じたのか、見られてた事に彼が気がつくと気まずそうに、視線が泳いだりなんかして」
どんどん出て来る、美咲は楽しそう。
「他にも、貴女が席を外してた時に彼が来たときに、私が対応するんだけど大抵は、あれ?今日は居ないの?みたいな質問もして来るから」
「どうかしましたか?って訪ねたら、いや、いいんだ。って言う割にはソワソワしてるし。」
「でも、あのてのタイプは注意が必要だと思うんだよね!」
「なんかね、愛情表現が変な方向に進んじゃうタイプだよ、あれは!」
美咲は、思う存分に話し切ったので、ご満悦である。
黙って、ひたすら聞いていた水菜は少しの間、美咲の言葉を整理しているようで、おとなしくなっている。
「えっと、私はどうしたらいいのかな?」
「まさか、そんな感じだとは微塵も感じて無くて、どうしよう!?」
水菜は困り出した。
「そっか、北川、佐々木、ありがとな!中々楽しい話だったよ。」
「うんうん、本当に恋っていいよな。満足満足」
悠史が話しを、中途半端な状態で終わらせようとした。悠史としては、今後水菜に降り掛かるかもしれないトラブル回避を、どうやって対策すれば良いのかを考えたかったのである。
が、しかし。
水菜は、この中途半端な状況では終わって欲しくないので、叫んでいた。
「えーっ、ちょっと待ってよ!!」
「困るんですけど、宙ぶらりんのまま放置しないで欲しいんですけど!!」
悠史はまだ整理がついていないし、具体的にこっちから動くことでの得策がある訳でもない。
少し困りながらも、話しかけてみた。
「普通にしてれば良いんだよ。」
「向こうが勝手に想いを募らせたんだから、こっちには何かする術なんてないよ。」
「じゃあ、明日から高仲君を避けて仕事する?」
水菜は少し落ち着いて来たらしい。
実際にはこちらから、現時点では特別リアクションする術もないからである。
正直なところ、これといって具体的な何かすら発生していないのが実情だ。
水菜は、静かな声で
「普通に、接するんだね。」
少し可哀想なきがするが・・
「大丈夫だよ、私か側で見ててあげるから」
「何か気がついたら、その時に考えよ」
美咲が、助け船を出してくれた。
水菜にとっては、心強い味方である。側で見守ってくれる味方がいると安心するのだろう。
「そうだよね別に彼だって、あまり気にした事無かったけど、人柄だって悪い人ではないもんね」
とりあえずではあるが、水菜は動揺する感情を落ち着かせようとしている。
この会話は、静かに消えていく