ブラックで踊る今日とfive star story 13 (忍び寄る見えない恋心5)
胸元が苦しくなる
心音が高鳴るドキドキドキ
前方に恋い焦がれた彼女
何故か同じ空間を共有している気分になる。
まるで助手席にでも存在しているようだ、ハンドルを握る左手をそっと伸ばすと、手を握れるのでは無いかと錯覚してしまう。
凄く長い時間をも共有しているようだ。
水菜は事務所から一番近くのコンビニに寄っただけである。その間15分ていどである。
目的の場所に近づき、その駐車場へハンドルを切った。
水菜は深く息を吸い込み静かにはきだした。
先程の美咲と悠史との会話が気がかりになっている。美咲の観察からすると彼は自分を意識しているというのだ。
思いもよらぬ突然の報告。
水菜はそんな事言われたって逆に違和感のある対応になってしまう自分が居そうで不安になる。本来なら感情がストレートに表現するタイプだと思ってる。というか、そうなってしまうのだ。
当然今までも、彼にはそんな感覚で見たことはない。まして、自分に対して何らかの感情を抱いているなんて感じたことも無ければ思った事もない。
再び息を吸い込んだ、そしてまた吐き出す。
そして車のドアを開けてコンビニの入り口へ向かう。
彼は極度の緊張状態から来るのか両脚の血の気が引いていく感覚があらわになっていく。
いつもと同じ様にアクセルワークやブレーキを行なっているのに手応えとして感覚が薄い。
前方の車がウィンカーを上げてコンビニの駐車場にゆっくりと入ってしまった。
高仲は前方の車と同じ様な行動を起こせなかった。
曲がって入っていく車を横目に見ながら少しだけ通り過ぎたコンビニに面した道路の反対側の空き地スペースに自車を忍ばせた。
以外とコンビニの状況がよく見える場所だと我ながら感心した。同時に水菜の車もよく見える状態だ。
自分の情け無さに後悔する。
運命は自分に味方したはずなのに、自分から拒否してしまったのだ。
(何をやっているのか!水菜は俺を待ってたんだぞ!あいつは俺に抱きしめて欲しがってるのに・・)
そんな時、水菜の乗った車の助手席のドアが開いた。彼女がら降りてきた、いつも眺めていた彼女の髪の毛が陽の光に照らされ控えめな茶色がキラキラと鮮やかな光沢を放つ。立ち上がる瞬間にその髪の毛がふわりと揺れる。
(やはり美しい・・お前は俺の女だ!)
(待たせて済まない・・)
彼は無雑作に置かれた助手席のスマートフォンを手に取りカメラ設定に切り替える。
そうこうしている内に水菜はコンビニの中に入っていった、ガラス越しに奥えと歩いて行くのが見える。
カメラモードにしたスマートフォンのズームを最大限に引き伸ばし、試しに覗き込んでみた。
(ちっ、こんなもんか!しょうがない・・)
コンビニ袋をぶら下げた水菜が出て来た。
すかさず高仲はスマートフォンのシャッターを切る。
2枚、3枚〜5枚取れた。
少しだけ苛立ちが紛れた気がした。
スマートフォンを元の位置に起き、エンジンを掛けて動き出す水菜の車の後ろに着く。
2台の車は来た道を戻る。
今回の行き来で違う所が生まれた。
高仲の車も水菜の後を追うように、水菜の会社の駐車場へ入って行った。
ようやく水菜は、もう一台の車に気がついた。