信剣士の細やかな時間のホット一息

チャレンジャーとしての世界で生きたいと思います。会社にエネルギーを注いで来ましたが自分の存在が如何に薄いのか思い知らされ、これからは自分の希望のためにエネルギーを使って見ます。私は何処まで歩いて行けるのか知りたいです。ぶらっと、いろんなテーマに触れて行こう。

《ブログ小説》愛と絆のfive star story 37(再び訪れた美咲の騒めき)

「どうぞ、こちらのテーブルへ」

 

店員さんが案内してくれたテーブルへ3人は席に着く美咲と水菜が横並びに座り、拓也はテーブルを挟んだ向かい側に座った。水菜が美咲に対して早速気になっている質問を始めた。

 

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「彼って何者なの?」

「うん、元彼・・」

「・・!!、・・・そうなんだ。」

 

美咲にとっては、水菜も拓也も身近に感じてる仲間と認識しているので、隠す気は無いのだけれど、苦くて刹那い感情に言葉が起用に出てこない状態なのだ。

「何となくなんだけど、美咲が惚れる様な男性にしては違和感を感じるタイプの相手じゃね!」

「うん、最初はあんなんじゃなかったの。」

「とりあえず、メニューの注文しとこうよ。」

「そうだね!」

 

3人はメニューを選び始めた。元々マドンナ達2人は充分なメニュー選びを行なってたためチョイスは早かった。拓也も初めから決めていたかの様に選ぶのが早い。拓也は3人のメニューが決まってる事を確認して店員さんに合図する。それに気が付くと店員さんは近づき注文を受けて行く。

 

「さすがに、お腹空いたね!」

「・・うん、気を取り直して美味しい物が食べたい気分だよ。」

 

そんな時、店員さんに案内されながら先ほどのカップルが美咲達の座るテーブルの横を通り過ぎようとした時、その男性がこちらのテーブルの前で立ち止まった。拓也達3人は彼の行動に驚き見上げる形で固まっている。美咲の顔つきが曇り始め、拓也がその表情を見逃さなかったのだが、先にリアクションをしたのは自分達のテーブルの前で立ち止まった男性だった。

 

「美咲・・お前って、自意識過剰なの?」

「久しぶりに、会ったって言うのに案外俺の事を軽くあしらうんだな。」

「・・・連れの子、居るじゃん!・・下がってよ。」

 

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お連れの女性も振り返る形で彼を見つめている。彼女もまた彼の突発的な行動に対処が追いついていないと言った状況らしい。

 

「いいのかな?この可愛らしいお嬢さんやイカしたお兄さんに、お前の情け無い過去話を晒しちゃうよ。」

「・・あのね、私は過去の自分が晒されて困る様な事は一切有りません!」

「2人共ごめんね、ビックリだよね。」

 

拓也は美咲に向かって軽く手を上げて美咲の発言を制した。拓也にとって事情がはっきり分からない状態ではあるのだが、彼の美咲に対しての執着心がこの場の状況にとって物凄く悪い空気を読んでる事だけは理解出来てる。

 

「お連れ様も居る様ですので、私達の事はそっとして貰って欲しいのですが、宜しいでしょうか?」

「・・・」

 

拓也の発信で、彼は静かになるしか無かった。彼は何故か分からないが美咲に対してストレスを掛けたいと願っていたのだが、拓也の存在を甘く見ていたのか以外にもこんなに早く拓也が反応して来るとは想像してなかったのだ。

 

「ねぇ、どうしたの?大人しく席に着こうよ!」

「すみません!連れ合いのものが、本当にすいません!」

 

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ようやく相方の女性も動けるようになった様である。拓也はその女性に一礼して挨拶した。拓也も今回の様な展開は想定外だったために驚いたのも事実である。

 

「美咲!凄い人と付き合ってた見たいだな。正直なところマジかよって感じだけど。」

「うん・・実はね、窪さんが一枚噛んでるんだ。彼とは色々あって、私が塞ぎこんでる事があって・・」

「!?」

「えっ、窪さん?」

「そう。」

「そうなんだ、ボスが関わったんだ。」

 

拓也は悠史が関わったことで若干、先ほどの彼に同情した。だからこその彼なのだなと感じるのだ。悠史って存在は関わる相手を伸ばす事も出来るし落とし込むことも可能だったりするのだ。簡単に説明すると人は、表面を整えたがる性質を持って居るのであるが、悠史は本質を覗く事の出来る性分なのだ。

 

(だから、あんなに美咲にも執着してたのか・・)

 

拓也は同性ならではの感性も理解できるが、肝心なのは美咲の心のメンタルが気掛かりだ。日頃は水菜の姉貴役みたいな、しっかり者の立ち位置で振舞っているのだが、今回ばかりは平常心を保つのは難しいだろうと推測出来る。

 

「で、美咲は大丈夫なのか?」

「さすがにビックリだってするだろうし、色々気持ちの整理だってあるんじゃね。」

「確かにビックリだよ!まさか元彼に遭遇するなんて思っても居なかったし・・」

 

(本当に変わっちゃったんだ・・どうしてあんなに惹かれてたんだろう・・)

(幸せだったのに・・あんな事が起こるまでは・・)

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美咲に起こってる状況に心配している水菜が、黙ったまま彼女の様子を伺っていたのだが、掛ける言葉が思いつかなくて心苦しさを覚えていた。

 

「咲ちゃん・・ゴメンね・・本当は力になりたいんだよ。」

「ミズ、何言ってるの!貴女は今のままの貴女で充分なんだからね!!」

「それより、せっかくの楽しい時間を台無しにしたみたいで申し訳無いよ。」

 

(2人の気持ちは嬉しい・・けど、1人になりたいよ・・)

(私は、色々整理出来てるって思ってた・・なんか苦しいよ・・)

 

美咲の表情が不安定だと拓也は感じている。しょうがないのだけど男性の本能なのか、そんな時は心が騒ぐものである。不安や刹那なのかそんな心境に苦しむ女性には感情を動かされるものである。

 

(あーぁ、見たくねーな美咲のこんな顔・・俺って、アイツに何が出来るんだ・・)

 

何となく、ざわつくテーブルを囲んだメンバーの奥の方で、更に騒がしさが漂って来た。先程から縁のあるカップルの席で何が起こってる様だ。

 

「あなたって、本当に最低!!」

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理由は分からないが、何やら揉め始めてる様である。拓也は何かと面倒を起こす相手と遭遇してしまったと溜息が出ると、そして美咲はそんな状況に対して更に感情の動揺を走らせる。

 

 

 

(ご愛読ありがとうございます。こちらの物語は連載物で長く続く作品となってます。この物語には短編的にもお楽しみ頂ける様に区切りを付けさせて頂いてますので、こちらからお楽しみ頂けると幸いです。)

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