《ブログ小説》愛と絆のfive star story 35(3人のドライブ)
拓也はちらっと時計目を向けた、丁度昼時に差し掛かろうとしていた。タイミングが良いのか悪いのかよく分からないと感じながら悠史に目を向け声をかけた。
「窪さん、ひょんな事からこの子達とお昼する事になっちゃって事務所開けますが、いいです?」
拓也は苦笑いを浮かべてる。悠史は拓也の表情から何となく流れを悟った様である。彼は拓也に若干の同情はしたのだがメンバー同士の交流が深まる事には賛成である。
「おう、いてら。」
悠史は、マドンナ2人に視線を向けて話し出した。
「おい、軽めにしとけよ。あんまりたからんようにな。」
「大丈夫よ。」
「私が本気でたかる相手はもう、決めてあります。ねェ!、く・ぼ・ず・か・さん、宜しくです。」
「なんだよ、ボスもターゲッティングされてるのかよ。」
「うちの女性陣は怖いわ。」
最初に事務所をスタスタと出て行ったのは拓也である。水菜の視線は悠史に向かっていたのだが拓也の行動につられるように視線が拓也と悠史の間を2、3往復した後、何と無く名残惜しそうに水菜も拓也を追いかけた。そして美咲が悠史に近寄り声を掛けてきた。
「・・何か、お土産用意してこようか?1人で寂しくない?」
「バカ、小学生じゃないんだから気にするな!」
「ふーん、折角さ優しいお母さんが気を回したのに・・大丈夫なんですか。」
「だから・・何か欲しければ、普通に頼むわ!」
悠史の反応は、美咲にとって想定内であったのだが、彼女にはこの一言二言を悠史に伝えたかったのだ。彼女にとっての気配りなのだろう。美咲は悠史に向かって手の平を悠史に向けて指だけを2度3度折り曲げて悠史に、行ってくるの合図をしてその場を離れた。
悠史は机の隅に置いてあるスマホを手に取りアプリを開いた。少し操作をして確認出来ると元の位置にスマホを戻す。
既に拓也は社用車のエンジンを掛けていた。少し間を置いて水菜が、その社用車の後部座席へ乗り込む。
「ねェ、拓君。拓君って食べ物に嫌いとか苦手って、有ったりするの?」
「おう、佐々木か・・特別好き嫌いなんて物は無いけどな。車内は暑いだろ、エアコンが効き始めるまで少し我慢しろよ」
小走りで遅れて来た美咲が、拓也の乗る車の助手席側のドアを開けて車内を見回し、後部座席に座る水菜を確認して声を掛けた。
「アレ、ミズ?私こっち座っていいの?」
「どうぞどうぞ!」
美咲はそのまま拓也の隣に座った。拓也は乗り込んで来た2人を確認して話しかけてきた。
「で、何食べたい?」
「パスタ!!」
「はやっ!美咲は大丈夫か?」
「宜しくお願いします!」
「それじゃあ、決まりだな。此処から近い場所で問題無いよな。」
「やったー!」
拓也は美咲に視線を向けた。美咲は微笑みながら相づちをうった。それを確認して車を進めた。
「拓ってさぁ、女の子に優しいよね。結構プライベートでは人気ものだったりするんじゃないの?」
「そうだよね!、拓君ってそんな感じ凄いするよね。」
「・・・」
(あのなーこんなにズケズケ来るのは君等ぐらいなもんだよ!俺がどれだけ君等に振り回されてると思ってるよ!!)
「んな訳無いよ。多分俺を優しいと感じるのは、此処だけのはずだし。」
「えーっ!そんな事無いよ絶対拓君は優しいんだよ。きっと、拓君ファン沢山居るよ!」
「ミズ、そうだよね!優しさ滲み出てるんだから。」
拓也は言葉を無くした。彼女達は天然なのか、鈍感なのか疑問すら感じる。チラッとルームミラー越しに水菜が映り込む、飼い主に遊びをせがむワンちゃんのの様に目玉をまん丸にしてキラつかせているし。ミズ隣に座る美咲に目を向けると自分のスマホでパスタ屋のメニューをチェックしている。きっと「近くのパスタ屋」で粗方検討がついたのだろう。
「君達は俺の振る舞いより自分達の振る舞いに注目した方が、俺は比較的平凡だった事が理解出来るはずだよ。」
「えっ!?ウチらは関係無いじゃん。仮にも私達が魅力女子だったとしても、拓君は拓君じゃん!!」
(・・・ダメだ、完璧にズレてる・・水菜はツッこんで欲しいのか?それとも、相当な天ちゃんなのか?・・このズレ感が、恐ろしい程に怖い。)
「あのなー、漫才したい訳では無いんだからな!」
「ねェ拓君、もうお腹すいたよ。もうそろそろ着く?」
(・・・とうとう会話すら繋がらなくなってしまった。)
一度彼女の脳みその回路を覗いて見たいと感じる。拓也は掴めない彼女に溜め息をこぼした。
「ミズ、これ見て。」
美咲が後部座席側に振り返って先程まで睨めっこしていたスマホを水菜にかざして手渡した。
「さすが、咲ちゃん準備万端だね!」
「凄ーい、メッチャ美味しそうなんですけどー、どーしよう迷っちゃう・・拓君も見る?」
「・・運転中なんですけど・・」
「ミズそうだよね、私もヤバッてなりながらチェックしてたもん。」
美咲は隣で運転する拓也を見てみる。案外無表情で前方に視線を向けて時折ハンドルを適度に回したりしてる。美咲は自分の隣で運転する男性を眺めるのを懐かしいなと感じていた。
(この小説を読み易いように作品のお好きな場所から読み進めて頂けるようなマップ記事を用意させて頂きました。此方のリンクから御愛読願います。)